新型コロナウイルス罹患と母乳研究

新型コロナウイルスに罹られてお母さま自身もご心配のことと思います。そのような状況で、母乳を赤ちゃんに与えてよいものかお悩みの方も少なくありません。これまで、コロナウイルスは母乳に移行しないため、母乳をあげることで赤ちゃんが感染することはないと考えられていましたが、新型コロナウイルスは新しいウイルスのため、実際にデータを集めたうえで判断すべきと考えております。本研究は昭和大学医学部小児科学講座の研究であり、研究に要する資金は講座研究費から支払われます。

【研究の参加基準】同意取得時の年齢が20歳以上であること・状態が落ち着いたら母乳育児を希望していること。なお、本研究は、合計200人の母親にご協力いただき実施を予定しております。

現状報告:9月10日現在、5症例8検体が届いております。

調査の内容】 保存した母乳は担当医師から昭和大学小児科学講座に郵送してもらいます。新型コロナウイルスに感染した女性の母乳に新型コロナウイルスがいるのか、また、新型コロナウイルスに対する免疫が母乳にでているか明らかになります。ただし、サンプルが集まってから、検査を行うことになります。そのため、今後、妊娠・出産される女性が、新型コロナウイルスに感染した際に母乳を与えてよいかどうか意思決定するうえで重要な研究になりますが、研究に参加していただくお母さまに役立つものではありません。

医療者の方へ

現在COVID-19患者は増加し、COVID-19女性が出産する事例も散見されています。SARS-CoV-2が母乳に移行し、児に感染させるという報告はこれまでのところはありません。また、SARS-CoV-2と同類のウイルスであるSARS-CoVやMERS-CoVが母乳を介して児に感染することはないと考えられています。

現状では、アメリカ疾病予防局ならびに世界保健機関ともに、COVID-19患者であっても母乳育児を推奨しています。ただ、国内ではCOVID-19患者は母乳をやめるよういわれる施設もあり、母乳とSARS-CoV-2に関するデータ蓄積が必須と考えています。そこで、UCSD(University of California, San Diego)のChambers教授の研究グループならびにBode教授の研究グループとともにSARS-CoV-2陽性女性の母乳を集めてPCR検査、SARS-CoV-2抗体検査、そしてサイトカイン測定を行います。このSARS-CoV-2は今後も変動はあるが私たちの生活にかかわっていくウイルスと考えられ、今後、妊娠出産する女性に根拠のあるデータを提供するためにも重要な研究と考えています。

COVID19-パンフレット

お母さまへ:搾乳について

出産の前後で新型コロナウイルスに感染しているとわかったら、赤ちゃんに母乳をあげてもよいのか不安になりますね。赤ちゃんにうつる心配がなくなるまでは粉ミルクをあげるよう勧められる場合もあります。 時間がたって心配がなくなったら母乳をあげたいと思われているとしたら、赤ちゃんにあげなくても母乳を搾っておく必要があります

母乳の中に新型コロナウイルスがいるのか、ウイルスから守ってくれる免疫(抗体)が母乳にでてくるのかを知るためにお母さまの母乳を使わせていただきます。ですので、搾乳するときに手指や咳から母乳にウイルスが入ってしまうと、正しい結果を得ることができませんので、以下のことをお願いします。

搾乳用に搾乳器・アルコール綿を提供しますのでお使いください(搾乳器は差し上げますので返却不要です)

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検体をとるための搾乳はシャワーの後にお願いします。

  • 石鹸と流水で手洗い
  • サージカルマスクを適切につける
  • 擦式アルコールで手指消毒
  • 搾乳器を置く台をアルコール綿でふきます
  • 擦式アルコールで手指消毒
  • 搾乳物品を用意します
  • 搾乳をします。
  • 終了後、擦式アルコールで手指消毒をして、母乳をフリーザー母乳パックに移します。
  • 母乳パック表面をアルコール綿で拭き、ビニール袋にいれ医療者に渡してください。

ご質問は⇒まで hkuwabara@med.showa-u.ac.jp または katsuorobi@med.showa-u.ac.jp

また、授乳中にコロナウイルスに感染し、レムデシビルやファビピラビルなどの治療を受けた場合、母乳はあげても大丈夫なのかも心配になりますね。あわせて以下の研究も行っております。ご協力をお願いいたします。

レムでシビル

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